不等価交換

同僚と数時間ショッピングモールを歩き回り、ちょっと休憩、とカフェに入った。

「さっきのお店で何買ったの?」

別に興味はなかったが他に話すこともないのでとりあえずそう聞いてみる。彼女は

「人感センサー付きの小さいライト。LEDライトなんだって」

と、手のひらよりやや大きい白い箱を取り出し私に見えるように開けてくれた。

中には白い充電用ケーブル、のみ。

中身だけ万引きされたのか、または店員がディスプレイ用に中身を取り出し箱だけ置いたままにしていたのか。中国では特段珍しいことではない。私はカフェを出たらもう一度その店に行こうと提案した。交換というか、中身をもらいに。

「いいの」

ところが彼女は首を横に振る。

「このままでいい。代わりに良いことがあるから」

 

スーパーで買った苺のパックに変な虫が入っていたり、ネット通販で買った靴の片方だけ金具がなかったり、デパートで買ったリップは家に帰って開けてみると色が違っていたり、そういうことが時々あるという。

しかし彼女は返品や返金を求めない。そういった形で彼女が損をすると毎回その後すぐにいいことがあるのだそうだ。小さい事ならガチャポンで欲しい物を一発で当てた、大きい事は転職に成功した、といった風に。

 

もし返金や返品をした場合は……? という私の疑問を見越してか、彼女はこう続けた。

「去年の休みに帰国した時、デパートで買ったバッグが家に帰って見てみると内側のポケットが破れてて。私はいいって言ったのにお母さんが勝手に換えてもらって来ちゃったの」

そして休み明けに中国へ戻ると外国人彼氏から結婚はできないと告げられた。

彼女の国籍を理由に、彼の母親が反対したらしい。

 

「お母さん、死んだりして」

ケーブルしか入っていない箱を嬉しそうにバッグへ仕舞った。