強欲婆

おばあさんが知人宅から白い百合の造花をもらって帰った時、真咲さんはこっそり捨ててしまおうかと思った。

真咲さんだけではない。彼女の両親もまた、「何でそんなもの貰ってくるの」と嫌な顔をした。特に母親はひどく気味悪がり、おばあさんが家の中に持って入ろうとするのを止め強引に玄関先に置かせた。

聞けば、おばあさんの知人は法要の日に仏壇周りを飾るのにその造花を使ったそうだ。

籠に入った白い百合は、花弁にぽつぽつと黒いカビが浮かんでいる。どことなく暗い雰囲気だった。法要に使用されたという経緯も相まって、その白百合は死を濃厚に連想させるものだった。

 

ところが数日後、家に訪ねて来たおばあさんの友人がその百合を欲しがった。

この友人――おばあさんと同年代で峰子さんという――が、ちょっと厄介な人だった。家に来ると何でも欲しがるのだ。おばあさんが作っておいた夕飯のおかず、真咲さんがテーブルに置きっぱなしにしていたメイク道具、捨てるつもりでまとめておいた古着。とにかく目に付いたものを

「あら、いいわねぇ」

の一言で、人のいいおばあさんはどうぞどうぞと渡してしまうのだ。

強くねだられたわけではないが、真咲さんはどうも峰子さんのことを物乞いのように感じていた。

その日も峰子さんは愛車であるスクーターに乗ってやって来た。玄関に入るやいなや、例の百合を目ざとく見つけ「あら、いいわねぇ」と言った。

そしていつも通りのやり取りを経て、白百合は峰子さんに貰われて行った。いつもは疎ましく思う真咲さんだが今回は喜んだ。

ただ、峰子さんを見送ったおばあさんがぽつりと呟いた

「これで大丈夫」

という言葉は少し気になったが。

 

それ以来、峰子さんが来ることはなくなった。

百合を持って家に帰る途中で事故に遭ったのだそうだ。

「あの百合のせいだと思うんです。おばあちゃんは分かってて峰子さんに譲ったんでしょうね」