翡翠を贈る

中国人のJさんが見せてくれたのは彼女自身の写真だった。

「もう五年も前に当時の彼氏にもらったものです」

写真の中の彼女の腕を指さした。緑色のブレスレットをしている。翡翠だったそうだ。

中国では大切な人へのプレゼントとしてダイヤモンドと並ぶくらい、あるいはそれ以上に翡翠が好まれる。彼氏からそれをもらった時、Jさんは大変に喜んだ。

「でも、もらってから1ヵ月もしないうに真っ二つになってしまいました」

Jさんによると、それはある日突然割れてしまったのだそうだ。腕輪をつけて歩いていたところふっと腕から重さが消え、足元に何かが落ちた。見ると割れた腕輪だった。何かにぶつけてしまったのではない。本当に突然、音もなく割れた。

五月八日、とJさんは言った。今でもはっきりその日を覚えているのだという。

そしてJさんと彼氏の関係も、腕輪と同じようにある日突然壊れてしまった。彼氏は既婚者だったのだ。Jさんと付き合い始めた時には確かに独身だったそうだが、同時に別の女性とも付き合いを続けていた。

後で分かったことなのだが、彼氏とその女性は五月八日に結婚したのだという。腕輪が割れたその日である。

「翡翠は本来相手の幸せを願って贈られるものなんですが……彼がくれたのは不幸の翡翠ですよ。だから別れてだいぶ経ってたけど彼に送り返しました」

どうやら彼女は、彼が別の女性と結婚したのはブレスレットのせいだと考えているようだ。ブレスレットが割れたから別れることになったのだと。

送り返された翡翠は果たして、彼女の不実な願いを叶えてくれるのだろうか。