家棲妖 三篇

水流し

Nさんの実家では時たま、誰も触っていないのに水道の水が流れることがあるそうだ。

初めのうちは認知症のおばあさんが閉め忘れているのだろうと家族の皆が思っていた。

ところがある日、Nさんがテレビを見ていると突然サーっと水が流れ出す音がした。急いで廊下に出ると先程しっかり閉めたはずの水道から水が出ている。

その日家にいたのはNさん一人だけ。おばあさんの仕業ではなかったのだとその時初めて気が付いた。

それからしばらくして、Nさんは家を出て一人暮らしを始めた。

一人暮らしの家でも時々ひとりでに水が出ていることがある。

久しぶりに電話をするとお母さんからはこんなことを言われたそうだ。

「あぁ、あんたがおらんくなってからおばあちゃんまともになったみたいで、水道締め忘れることもなくなったわ」

襖鳴らし 壱

大学生のFさんが食事を作っていると、台所の後ろの襖がスパーン! と音を立てて閉じた。

(今日は一人だと思ったけど、弟もいたのか)

Fさんは閉められた襖に向かって声をかけた。

「あんたもご飯食べる?」

手を止めて返事を待つも、全く反応がない。

「どうする?」

やはり返事はない。

しびれを切らしたFさんが襖をサッと開ける。

――誰もいない。

すると、台所横の勝手口から「ただいま」と弟が帰って来た。

襖鳴らし 弐

Rさんが小学生の頃、毎晩のように二歳上の兄と布団に仰向けに寝転び、押入れの襖を蹴って遊んでいた。

その夜も二人してドスドスと蹴っていたら兄が急に足を止めた。

「ちょっと」と言いRさんの足を押さえる。

ドスドスドスドスドス

二人が蹴っていたところから数十センチは高い場所から音が鳴り続ける。すでに二人は足を下ろしていたにも関わらず。

それからすぐにドンッと鳴って襖が大きく一回跳ねると、途端に静かになった。

僅かに襖を開けて中を確かめてみたが音の原因となるような物は見当たらなかったそうだ。

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