舌が覚えている

30代の主婦、Rさんは会うなり春先に出会った男性の愚痴をこぼし始めた。

出会い系サイトで会った彼は40代と言っていたが実際にはそれよりも20歳ほど上に見えたこと、ヘビースモーカーだったせいか歯は汚くキスの際に口周りを舐めまわされてえずきそうになったこと、自称テクニシャンなのにガサツでかさついた手に触られる度に痛かったこと、無理やりに咥えさせられた男性器も臭く出来るだけ息を止めていたせいで苦しかったこと。

そこまで一気に喋ったRさんは重いため息をついた。

「もう二度と会いたくないからホテル出たらすぐにLINEブロックしました」

それで終わるはずだったのに、ふと思い出すのだという。

 

メントールタバコの苦みと僅かな清涼感、彼の体液の生臭さと塩気。

時折それらがふっと舌に蘇るのだそうだ。

「もう4ヶ月以上も経つのに……その度にいつもオエッてなるんです」

 

前述の通り、その男性とは連絡を絶っているので現在どうしているのかは分からないということだが、出会い系サイトに載せている彼のプロフィールを見せて頂いた。

 

『〇〇市在住のアラフォーです^^

半端ないアゲチンパワーの持ち主。関わった女性はみんな大出世!

運が悪いアナタ、何もかもが上手く行ってないアナタ、どん底のアナタ!

僕とエッチする価値はありますよ^^』

 

小綺麗で上品な主婦のRさんにも、怪しげなパワーに縋りたくなるほどの悩みがあったのだろうか。

結局、舌の謎は分からず仕舞いである。

 

 

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