挿げ替え

Nさんの大学のキャンパス内には全部で6基のエレベーターがある。ごく普通の、奥が鏡張りになっているタイプのものだ。

そのうちの1つ、教育棟にあるエレベーターの鏡だけは何故かフェルトで覆われている。Nさんはそれを常々不思議に思っていた。

「何でそこだけわざわざ見えないようにしてるのかなぁって」

だからある日、例のエレベーターに乗った時にフェルトを捲ってみることにした。

セロハンテープで留めてあるだけのフェルトは簡単に剥がれた。

下からゆっくりと持ち上げる。

しゃがみこんだ自分の足元が鏡に映る。

膝、胸、首元――

そして顎、下唇辺りまで来た時、

「違和感があったんです」

 

一気にフェルトを持ち上げる。

 

鏡の中にいたのは、初老の女性。

それはNさんのゼミの教授だった。

どういうわけか鏡の中のNさんは顔だけが教授になっていたという。

 

その教授とNさんの間に何かあったわけではないし、今も教授はご健在だそうだ。

大阪のとある大学での話である。

 

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