命の影

Eさんという女性がある日、日課の散歩に出かけた。

20分ほど歩いた先にある小川はお気に入りの場所だった。

Eさんはその日も小川の畔でしばらく過ごそうと思っていたのだが、すでに先客がいた。

隣の家に住むKさんだ。

川縁に腰かけて、足で水面をぱしゃぱしゃと揺らしている。

 

「こんにちは」

いつものように挨拶をしたのだが、Kさんからの返事はない。

それどころかこちらを見もしない。

「Kさんもいらっしゃってたんですね」

もう一歩近づいて声をかけてみるも、相変わらずKさんの視線は水面辺りに降ろされたままである。

 

――何なのかしら

Kさんの様子に気を悪くしたEさんは、来た道を引き返した。

そして、自宅へと差し掛かった時。

隣家の玄関先からKさんが出てきた。

手に持った麻袋をひっくり返し、ゴミをざらざらと道に捨てている。

今しがた、川にいたKさんが。

 

「Kさん!?」

驚いたEさんは先程の川での出来事をKさんにすっかり話した。

 

「家にいましたよ、朝からずっとこれやってたので」

と、Kさんは足元のゴミを指さした。

大量の落花生の殻だった。Kさんは朝からずっと落花生を剥いていたというのだ。

見間違いだということでその日はお互い納得したのだが、翌日、Kさんは亡くなってしまった。

どうやら見間違いではなかったようだ。

 

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中国版ドッペルゲンガー

ドッペルゲンガー、つまり、もう一人の自分は「命の影」と呼ばれる。

自身の命の影を他人に目撃され、更に「見た」と指摘されるとその人は三日以内に死ぬのだという。

ちなみに目撃者が自分である場合は問題ないらしい。

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