休日の学校

現在四十代のFさんがまだ二十代の頃、教師になる前のこと。
教員採用試験を一ヶ月後に控えた彼女は特別に休日の学校を開けてもらって、試験科目の一つである体育の練習をしていた。

知り合いの現役教師であるSさんに手伝ってもらいながらの練習は朝から夕方まで続いた。

約九時間の練習を終え、マットや跳び箱などの器具を片付けていると校舎内からピアノの音が聞こえてきた。
他にも試験の準備をしている人がいるんだろうか、そう思いながら学校を後にした。

その日の彼女の記憶は帰宅したところで終わっている。
意識を取り戻したのは丸一日経った後だった。

家族の話によると、帰ってきた彼女は高熱を出して玄関に倒れていたのだという。
その日は体調が悪かったというわけではなく、いまだに高熱の原因は分からない。

後日、Sさんから聞いた話では、その日学校には二人しかおらず、更にピアノの音が聞こえていたのはFさんだけで、Sさんには何も聞こえなかったそうだ。
結局何も分からずじまいであったが、その年、Fさんは無事に採用試験に合格した。今では教師歴十八年のベテラン先生だ。

「今でも休日の学校はちょっと怖いで。ピアノの音が聞こえたらまた熱出しそうやし」

大切な思い出を懐かしむようなFさんの語り口が、今でも印象に残っている。

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