事故物件の理不尽な霊

シンガポールにいた頃、当時住んでいたマンションで自殺をした人がいた。私は仕事に行っていたので現場も何も見ていないのだが、後で同居人に聞いた話では通報してから三十分足らずで警察が遺体回収、その後すぐに清掃が始まって一時間程度で現場は元通りになったのだそうだ。

自殺の痕跡は消えたかもしれないが、現場となった部屋はいわゆる事故物件である。しばらく誰も入居しないだろうと思っていた。

ところが僅か数日で新しい住人が引っ越してきたので驚いた。
そこで、シンガポールでの事故物件の取り扱いについて同居人に尋ねたところ、こんな話をしてくれた。

十年以上前、マンションの一室で住人の女性が殺害された。両腕を切断され、首や胸をメッタ刺しにされて殺されていた。
すぐに犯人が逮捕されたため、現場の処理も早かった。新たな住人が入居したのはそれから間もなくの事だった。

事件から数ヵ月経った頃、異変が起こった。
件の部屋の隣に住む一家の母親がノイローゼになったのである。

「夜になると腕のない女性の霊が体の上に落ちてきて眠れない」と。

そのうち食事も摂れなくなり、げっそりと痩せてしまった。そして、とうとう首をつって自殺した。

残された家族が悲しみに暮れる中、今度は子供が病気になって入院。治療の甲斐なく入院から半月で亡くなった。その翌日、父親も後を追うように自殺をしたのだという。
殺人事件が起こってから一年以内に、隣室の一家は全員亡くなってしまったのである。

 

「でもね、殺人事件があった部屋に引っ越してきた人には何もなかったんだって。殺人でさえそうなんだから、自殺なんか気にする人いないよ」

人口過密で住宅事情が他の国とは異なるシンガポールでは仕方のない事かもしれない。
しかし、いまだにどこか腑に落ちない話である。

 

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