マンションの火災

「怪談とか不思議な話とか怖い話とか、そういうの集めてるんですよ」と言うと、大抵の人は幽霊目撃談の事だと思うのか「いやー私、霊感ないんで」といった反応をする。

しかし稀に「幽霊とかそういう話じゃないんだけどね」という前置きとともに面白い話を聞かせてくれることがある。

これも「オバケは出てきませんけど」と言って始まった、とある理学療法士さんの話である。


理学療法士のOさんが勤務する病院の近所にとあるマンションがある。
5つほどの棟があり、それぞれが11階建て、1フロアの部屋数は4つ。

そのうちの1つ、C棟で数年前に火事があった。

出火元は老夫婦が住む7階の部屋。
火事の前日から泊まりにきていた夫婦の姪である女性が、
夫婦が出かけている間に放火したのが原因だと報道された。

その後女性はベランダから飛び降り、一命は取り留めたものの意識不明の重体。
現在も入院中とのこと。

件の部屋はいまだに、外からでも一見して火事があったと分かる程に部屋の上下左右の壁が真っ黒になっている。
現在その老夫婦は引っ越したため件の部屋は空いているそうだ。

火事の翌日、新聞でその事件を知ったOさんは妙な事を思い出した。

それは10年以上前に同じマンションで起こった火事の事だった。
気になったOさんがインターネットで以前の火事について調べると
『C棟7階の一室で火事 部屋に住む夫婦が死亡』という記事を見つけた。

なんとなく、今回の事件があった部屋と同じ部屋なんじゃないか、と思ったそうだ。

「偶然にしては怖いですね」と私が言うと、

「いえ、それも怖いんですが……実は私の知り合いがそのマンションに住んでいて、例の老夫婦と顔見知りなんです。それで、そのご夫婦は『放火したあの女は姪じゃない。見ず知らずの全くの他人』って言っているらしくて。私はそっちの方が怖いんです」

何とも言えない顔でOさんがそう教えてくれた。

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