先代の住職

関西地方に住むYさんは、住職であるご主人と共に江戸時代からある大きなお寺に住んでいる。

ある日、Yさんは庭の花を摘んで生けてみたらなかなか良い出来だったのでスマホで写真を撮った。その写真をSNSにアップしたところ、それを見た知り合いからこんなコメントがついた。

”奥にいるのはご主人?”

撮った時には気が付かなかったが、写真を拡大してよく見てみると、確かに奥の方に袈裟を着けたお坊さんが写っていた。手前の花を写した写真なので多少ピンボケしているが、一見してお坊さんと分かる。しかし撮影時、お寺の住職であるご主人は外出していたのだという。

怖くなったYさんはご主人にも写真を見せた。じっと画面を見ていたご主人は表情を強張らせ、それから大きくため息をついて「Iさんやろか」と呟いた。

Iさん――Yさん夫婦が住む前にお寺にいた、つまり先代の住職のことである。ご主人には写真に写ったお坊さんが先代の住職に見えたのだそうだ。

 

「じゃあ、これって心霊写真ですか?」
親指と人差し指で件の部分を拡大しつつYさんに尋ねる。
「せやなぁ、Iさんはだいぶ前に亡くなっとるから、立派な心霊写真やな」
なるほど、確かに少しボケているがお坊さんが俯いているように見える。袈裟を着けているのも見て取れた。

「今もIさんはお寺にいるんですかね?」
「もうおらんと思うで」
Yさんはきっぱりとそう言い切った。

「今の寺に引っ越してからずっと本堂からお経が聞こえやってん。誰も本堂におらん時にやで。けど、写真撮った日から何も聞こえんくなったわ」

Iさんは亡くなった後もしばらくお勤めをしていたのだろうか。

写真に撮られたのを境にいなくなったのには、何か理由があるのだろうか。

 

 

家庭の秘密 医療事務の仕事をしているFさんは以前、小さなクリニックに勤めていた。 穏やかな院長に気さくな看護師。居心地のいい職場だったそうだが、僅か半年で辞めてしまった。 「院長先生の自宅がクリニックの敷地内にあったんですよ。真っ白......

  • 銀行員の失敗 まぁ、霊体験ではあるんですけど、自分の中では「あーやっちゃったな」っていう、反省の気持ちの方が大きくて――   知人の雅人さんという銀行員に聞いた話である。   去年、彼の勤める銀行に一人の中年男性が......
  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA